私たち、政略結婚しています。
Ⅲ・不穏な雲行き
元カノの思惑
翌日。
目覚めてすぐに、身体がだるいことに気付いた。
そっと視線を自分の身体に向ける。
…あ。これか…。
私の胸の上にどっかりと置かれた腕。
視線を真横に向けると、克哉がすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている。
「もう…。重いって…」
小声で言いながらそっとその前髪に手をやる。
それは私の指をすり抜けてさらりと落ちた。
「呑気ね」
そのまま彼の唇にそっとキスを落とした。
再びこうして私の隣に克哉がいることに、戸惑いを感じながらも幸せに思う。
帰ってこい、と言った後で『いずれ別れる時期がくる』と彼は言った。
今さらだけど、克哉は何故私を助けようと思ったのだろう。
糸井製菓との縁談が浅尾屋を十分救えたはずだ。
私を哀れに思ったにしても、普通は結婚までしてはくれまい。
ましてや、付き合っている恋人までいたのに。