私たち、政略結婚しています。
「ん…、佐奈ー…」
ドキッ。
ふと呼ばれて驚く。
「克哉…?」
呼び返してみるが、その目は閉じたままだ。
…寝言か…。
夢の中で私はまた彼に悪態をついているのだろうか。
そんな私を見て彼はいつものようなため息をついているのだろうか。
どうして私なんかのためにそこまでできるの?
優しさ以外に、理由はあるのだろうか。
考えても、克哉の頭の中のことは何も分からない。
「克哉。克哉、起きて。朝だよ」
私は彼に呼びかけた。
「んー…」
反応はあるものの彼はなかなか起きない。
「会社。遅刻するよ」
少し大きな声で言ってみる。
「あ…?…ああ、うん」
ようやくその目が開いて私を見た。
彼の顔を覗きこんで再び言う。
「手。どかしてよ。起きれない」