私たち、政略結婚しています。
すると克哉はニコッと笑ってから、私に全身を巻きつけてきた。
「きゃ!」
「起きなくてもいい。今日は休んでこうしていよう」
「な!ダメよ!二人で休んだら怪しまれる」
私の言葉に彼の笑みが消えた。
「まずいのかよ」
「まずいでしょ!企画も大詰めだし」
あんたがばれたら離婚だと言ったのよ?
…あ。
ばれたほうが、克哉にとっては都合がいいか…。
妙な沈黙が二人の間に流れる。
急に黙った私に気付いて、彼は半身を起こした。
「冗談だ。少し寝ぼけてた」
「あ、うん。…そう」
何故だろう。気まずい空気が消えない。
「佐奈のいびき、久々だった」
そんな雰囲気を変えるかのように彼は急におどけて言った。
「いびき!?かいてないわ!」
「あはは。こんど録音しておいてやるよ」
「そんなの、嘘!かいてない!」
いつもの調子に戻り、文句を言いながら枕を彼にぶつける。
さっきの一瞬の間は…一体何だったのだろう。
やっぱり考えても、何も分からなかった。