私たち、政略結婚しています。
「あの…?」
私は身構えた。
克哉の恋人だった人。
私が二人を引き離した。
彼女の恋人だった人の腕に抱かれて今朝は目覚めた。
私にそんな権利などないくせに。
実家のことがなかったならば、彼に抱かれるのは今もこの人だったのに。
幸せだと、離れたくないと思った。私は中沢さんにも、克哉にも、悪いことをしている。
その自覚はもちろんある。
「そんなに驚かないで。話してもいいかしら?時間、ある?」
「…はい」
逃げだすつもりなんてない。
怖いけれど、彼女の話を聞く義務が私にはある。
「じゃあ、遠慮なく、言わせてもらうわ」
ニコニコしていたその顔が、急に険しくなるのを見ながら私は唇を固く結んだ。