私たち、政略結婚しています。
私が、彼から離れることができる唯一の方法。
彼が私に、情けや優しさをかけることができなくなる方法。
私自身がこの状況を不幸だと嘆けばいい。
「…佐奈…」
「私ね!あんたが昔から本当に嫌いなの。だからいつもつい文句ばかり言っちゃって。今さらだけど結婚なんてよくしたなーって。改めて思っちゃった。気持ち悪いよねー、愛もないのに」
そこまで言って彼から目を逸らした。自分の口から出ている言葉が、自分でも信じられない思いだ。
だけど、あんたは優しいから、浅尾屋のために最愛の人をこれからも待たせる。
私をきっと、捨てきれない。
彼女と約束したの。
克哉に気付かれたりなんかしないって。
あんたを苦しめたくはないから。
私は大丈夫。
あんたと過ごした時間を忘れないから。
それだけあれば、十分なの。