私たち、政略結婚しています。
「女々しいな…」
それを指で弄びながら呟く。
「克哉」
そのとき声をかけられて振り返った。
「…亜由美」
ニコニコと笑いながら亜由美は俺に近づいてきた。
「何、こんなところで。サボり?珍しいじゃない。企画の鬼が」
彼女は俺の隣に立って言いながら可笑しそうに笑う。
「そうか?俺もさぼるよ。部の中では不真面目な方じゃないかな」
言いながら慌てて指輪の箱をしまう。
「あなたが非常階段を上るのが見えて付いてきたの。驚いた?」
「驚くよ。仕事に戻れよ。…って、俺もか」
目を合わせて笑う。
亜由美を好きになれたらどんなにいいだろう。
こんな風に苦しむことなんてきっとなくなるのだろう。