私たち、政略結婚しています。
「煙草、確か止めたはずよね?また吸うようになったのね。久しぶりに見たわ」
「え、…ああ」
亜由美と付き合っていた頃は確か手放せなかった。
彼女とホテルで過ごした後は、ひっきりなしに火を点けたものだ。
罪悪感からか、もどかしさからか…。常に満たされない何かを抱えていたように思う。
そんな俺が、たった一言言われただけでこれを捨てた。
『臭い。嫌いなのよね、その匂い。近づかないで』
結婚してすぐに、佐奈が言いながら眉をひそめた。
『じゃあ止めたらキスしてもいいよな』
『え!?そんなの、しないわよ。実家のための結婚なんだから。大体あんたみたいなヘビースモーカーが禁煙なんてできないわよ』
『禁煙したら、寝室は同じな』
『え!?やだ』
『嫌じゃない。よし、決まり』