私たち、政略結婚しています。
「じゃ…、俺行くわ」
「うん。…何かあったらいつでも言って。話くらいは聞けるから」
「…おう。サンキュ」
亜由美をその場に残し仕事に戻る。
戻れば佐奈がいる。
気まずいが、平常でいられるようにうまくやろう。自分に言い聞かせる。
途中の自販機の横のゴミ箱に、ポケットの中の箱をドサッと捨てる。
…もう、理由は何もない。
この結婚を続ける意味はない。
佐奈の心の中に、俺はいない。
しばらくゴミ箱を眺めていたが、そのまま歩き出した。
その時の俺は、何も知らなかった。
――俺が去った後で、そのゴミ箱にそっと手を入れて箱を拾い上げた人物がいたことを。
彼女は、箱を開いて……ニヤリと嬉しそうに、笑った。