私たち、政略結婚しています。
「お巡りさん!こいつ、ストーカーです!」
男の身体にしがみついて彼は言う。
「危ないわ!いい加減にして!」
私もめげずに彼に言う。
「克哉!離して!」
「あー!もう!うるせぇ!」
「うるさいとは何よ!!私はあんたを心配して!」
「自分の妻につきまとった男を許せってのかよ!お前は俺のものだろ?!」
「…え…」
「…あ…」
彼の最後の言葉にお互いの勢いがしぼむ。急に二人黙り込んだ。
…彼の顔を見ることができずに地面に視線を落とす。
「…佐奈。…赤いぞ」
「…っ……」
あんたが急にそんなことを言うから…!
――「あのー…。事情を署のほうでお聞きしても…?」
あ。
二人で顔を上げると、男の腕をすでに掴んだ状態のお巡りさんが苦笑いをしながらこちらを見ていた。
「犬も食わない、とは言いますがね。続きは帰られてからどうぞ。
……この男にも色々聞いてみましょう」
「そいつは捕まるんですか?」
克哉が男を睨みながら言うとお巡りさんはニコニコしながら言った。
「お話を伺ってからですよ。
あなたも暴力を振るった以上、彼だけが加害者とは言えませんからね。
…まぁ、あなたの可愛い奥さんは無事ですからそんなに焦らないで」
私は恥ずかしくて顔を上げることが出来なかった。