私たち、政略結婚しています。
***
静まり返ったマンションの部屋の前で鍵を取り出しそっと開ける。
ドアを開けると、やはり明かりは無かった。
「実家に帰ったか」
小さな声で呟いて、靴を脱ぐ。
もう、あの笑顔に出迎えられることは無いのだと思うと、言いようのない寂しさを感じた。
リビングのソファにスーツの上着をバサリと置くと、ネクタイを緩めながら寝室に向かおうとそっとドアに手をかけた。
――「う…っ。ぐすっ。…うぇぇー…」
な!?
何だ!?
中から微かに聞こえてくる声にギョッとした。
明かりも点いていない部屋から、泣き声がする。
俺はそっと耳をすました。