私たち、政略結婚しています。
「離婚はしない」
克哉が私を抱く腕の力を強めて言った。
「……あんたのためなのに」
鼻の奥がツンと痛む。
服を取りに来ただけなのに思わず克哉の枕を抱きしめて泣いた私の姿を見て、克哉は何を思ったのだろうか。その矛盾に私の本心を見抜いたのかもしれない。
「お前が何を言おうと俺はお前とは別れないから」
「同情を引いてあんたの人生を狂わせるつもりはないわ」
「同情じゃないよ。言っただろ?…お前が好きだって」
「一度に何人もの女に同じことが言えるのね」
「…え?」
は。しまった。
思わず口にした言葉に私は黙って彼から目を逸らした。
「佐奈。……何があった?」
「…何も…」
中沢さんのことを知っていると彼に知られてはいけない。