私たち、政略結婚しています。
「そうね。…すごいわ」
私はそんな二人の会話に適当に答えながら全く違うことを考えていた。
昨日。
あれから彼女は克哉に会って何を話したのだろうか。
私と別れないと言って抱いたその腕で克哉は再び中沢さんを抱いたのだろうか。
何が本当のことなのだろう。
どうしてそんなに器用にふるまえるのだろう。
嘘だとは決して思えないような真剣な瞳で、涙を流してまで私に伝えたかったことは何なのか。
それでも彼を未だに本物の悪人だと思えない私は、彼に心から本当に騙されてしまっているの?
指輪の輝きを思い出し胸が痛む。
見たくなかった。知りたくなかった。
「よ。お疲れ。どう?順調に進んでる?そろそろ俺達と撮影の交代時間だけど」
そんな私たちのそばに、もう一つの企画チームのメンバーが近づいてきた。
「秋本くん」
私は頭の中にあったことを慌てて吹き飛ばし笑顔を見せた。