私たち、政略結婚しています。
それに克哉が好きだとバレバレですって!?

あ…ありえない。
そんなの!恥ずかしすぎる!

「う、嘘よ!好きだなんて、そんなことないもの」

オロオロと否定する私に彼は笑いながらさらに言う。

「まだくっついてないの?おかしいな~、伊藤さんも俺に牽制しまくりだったのに。じれったい二人だな」

「牽制?」

「うん。浅尾さんに近づくなー!的な?だから俺、その頃告られた同郷の彼女と付き合いだしたんだよ。ま、今ではうまくやってるから、もう過去の話なんだけど」

秋元くんたちとよく飲んでいたのは、結婚したばかりの頃だろうか。
秋本くんの言う牽制とは克哉お得意の『旦那の義務』からだとは思うけれど。結婚したからには守らなければ、みたいな。
ストーカーが現れたときもそうだった。
そこに特別な意味などはきっとない。

「…浅尾さん。俺…協力しようか?」

「え?何を」

私が聞き返したその時、秋本くんが私に顔をぐっと近付けて囁いた。

「…今も。伊藤さん、すげぇ目で時々こっちを睨んでる。少し妬かせてやろうよ」

「え…っ、秋本くん、顔が近いよ?ちょっと」

私はたじろぎながら背を反らし彼から顔を離そうとした。


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