私たち、政略結婚しています。
「…秋本くん、わたしちょっとトイレ」
「あ、うん。大丈夫?」
「うん…」
ふらつく私に秋本くんが心配そうな顔をする。
「…何があるのか知らないけど、…無茶しないでよ?俺は妬かせる程度のつもりだったのに」
「…彼はそんな気持ちにはならないわ。今頃ホッとしてるはず」
「…浅尾さん?」
私はそのまま部屋を出た。
トイレの横のベンチに腰掛けて大きなため息をつく。
これでいい。
秋本くんには悪いけどもうしばらく私の芝居に付き合ってもらおう。
克哉と中沢さんが…結婚するまで。
「あら。偶然ね」
その時、聞き慣れた声がした。
思わずゾクリと背筋が粟立つ。
「…中沢さん」