私たち、政略結婚しています。
そこには昨日と同じ、貼り付けたような笑顔。
この人の笑顔は、目だけがいつも笑っていないことに今、気付いた。
「よく…会いますね」
こんなにあちこちで特定の人と会うものかしら。
まるで、後をつけられているみたいに。
ストーカーに追われていたからそんな風に思うのかもしれない。
だけど、彼女と顔を合わせることが偶然だけのような気がしなかった。
「何?…何が言いたいの?私が故意にあなたに会いたいと思うはずないでしょ」
彼女の言い方にドキリとする。
「いえ、私は別に…」
「あなたの目を見てたら、何だか怪訝そうだから。別にあなたと克哉を見張ってる訳じゃないのよ。私も今日は受付の人たちとここでご飯だったの」
「あ、はい。別に見張っているだなんて思っていないですから」
私が彼女の話に同意すると、中沢さんはフフッと含みのある笑いをこぼしながら口を押さえた。
その手にはもちろん結婚指輪がしっかりとはめられている。