私たち、政略結婚しています。
「つまらない女ね、あなたって」
「え?」
「自分の意見とか考えはないの?いつも私の話を肯定するだけ。
克哉もさぞ退屈だったでしょうね」
私は何も言わずに彼女を見つめていた。
その通りだと思う。
今の私は本当の自分じゃない。
そもそも彼を好きだという気持ち自体を偽っているのだから。
彼女と話しているときは彼女の言いなりにならざるを得ないのだ。
「別にあなたにどう思われても構わないわ。邪魔をして申し訳なかったと思うだけよ」
つい、少し気持ちが反応して投げやりな言い方をしてしまう。
「………ふぅん。そんな気持ちがあったのね。
あなたは怒っていると思っていたわ」
「怒っても仕方ないです。……あなたを苦しめたのだから。悪いのは私だから」
「克哉と離婚して私に返す気持ちは本物なのね?」
「ええ。実家のための、いわば政略結婚みたいなものだもの。……当然だわ。
恋人がいると知っていたらこうはなっていなかった」