私たち、政略結婚しています。
泣きたくなる気持ちを堪えて俯いた。
私には泣く権利すらない。
彼との日々に幸せを感じた。
このままこうしていたいと心から願った。
そんな気持ちが自分にあったことを中沢さんに知られたくない。
「………好きだったくせに。
あなたみたいな人、本当に嫌いだわ。何も知らなかったと言い訳ばかり。
早く別れてよね。
彼は私のものよ。勘違いしないでよ」
言い捨てると彼女はこの場を立ち去った。
「………うー……」
もう、…どうでもいい。
涙が溢れて止まらない。
好きで、堪らなかった。
ずっと憧れていた人と、結婚できた。
理由なんて問題じゃなかった。
彼女の言う通り、勘違いしていた。
初めから愛なんて、彼にはなかったのに。