私たち、政略結婚しています。
俺は立ち上がった。
「ちょっとトイレ」
山野に告げて部屋を出る。
足早に歩きながら思う。
それが言いたかったのか。
秋本のことを思いながら俺に抱かれていたのか。
俺と別れて秋本の元へ行きたかったのに、行けなかった。そんなことを考えていただなんて、全く気付かなかった。
何度も俺から逃れようとしていた佐奈を、引き止めて実家の話をした。
素直に従う彼女が、もしかしたら自分を好きなのだと思っていた。
全て俺の思い込みだったというのか。
お前にはっきりと聞くまでは、信じない。
俺ではなく…秋本が好きなのか?
佐奈。
俺じゃ、やはり駄目だったのか?