叶わぬ恋の叶え方
「あなた、そのエリカとかっていうタレントに似てるってよく言われるの?」
「柊えれなですか?」
「何だか知らないけど、その人」
「似てるって言われたのはこれが初めてですよ。そもそも柊えれなってすぐに消えちゃったマイナータレントだったし、誰も覚えていませんよ」
「あなた、そのタレントのこと知ってるの」
「まあ、少しは」
「正直、あなたはタレントに似てるってタイプじゃないわ。眼鏡をかけていて大人しそうだし」
ずいぶんとざっくばらんに言ってくれる。ようするに地味だってことだろう。
眼鏡をかけているのは、ラインで細かい作業をしている内に視力が落ちたからだ。
「ええ、自分でもそうだろうと思います」
口では同意する。でも、こう見えても昔は仕事柄メイクバッチリだったんだから。
咲子はちょっと昔を思い出した。
二十歳ぐらいの時の自分は、今よりももっと華やかだったけど、あの頃に戻りたいなんて思わない。
江波さんは話したいことだけ話すと、ジャーっとベッドのカーテンを引いて寝てしまった。
病室はまた静かになった。