叶わぬ恋の叶え方
先生が去ると、隣のベッドのカーテンをジャーッと開けて江波さんが話しかけてきた。
彼女はカーテンの中で眠っているのかと思いきや、どうもこちらの話を聞いているらしい。
「坂井先生、ちょっとイケメンでしょ」
「え、ええ」
今度は彼の話に及んでくるのかと咲子は思った。
「あなたを見舞いに来た人もそう言ってたわよね」
「ああ、あの人のことですね」
同僚の清水さんとの遣り取りのことまで覚えているなんて、なんという好奇心と地獄耳。
「あなたもあの先生にちょっと興味があるでしょ」
江波さんがニヤついた顔で言ってくる。
「いや、あの、まあいい感じの先生だなとは思いますけど」
咲子の返答がどうあれ、彼女は話をしたくてたまらなさそうだ。
江波さんは糖尿病の治療で1ヶ月以上ここに入院している。入院中に同年輩の女友達も見つけたようで、病棟の事情にも詳しくなったみたいだ。