叶わぬ恋の叶え方
「丹羽さんじゃないですか」
頭上から声をかけられた。
スマホの手を止めて上を見上げると、そこには白衣姿の坂井医師がいた。その顔に笑みを浮かべている。
「あ、先生。こんにちは」
ふいを突かれて咲子は会釈をする。
「休憩時間ですか」
「そうなんです」
彼はトレーの上にトールサイズのカップを載せている。
まさか、病室の外で先生に会うなんて。
「隣いいですか」
先生が咲子の隣の席に目をやる。店には他にあまり空いている席がなかった。
「あ、どうぞ」
彼は咲子のはす向かいに座った。