叶わぬ恋の叶え方
「シナモンロールですか。おいしそうですね」
「ええ。たまには甘いものを食べたいと思いまして」
「いいですね。僕もたまに疲れた時、甘いものが欲しくなりますよ」
「甘いものはお好きなんですか」
「嫌いじゃないですね。丹羽さんこそ、お菓子メーカーにお勤めだから、いつでも食べられるんじゃないですか」
「ええ、うちの商品は社販価格で買えますよ。でも、あんまり食べ過ぎるとカロリーが危険ですから、そんなにしょっちゅう買って帰りはしませんけど」
「そうなんですか。それはいいですね。うちの子がうらやましがりそうだ」
「お子さん、いらっしゃるんですね」
咲子は江波さんの話など聞いていないかのようなことを言う。
「はい。小1の娘が一人います」
「そうなんですか。大きいお嬢さんがいらっしゃるんですね」
「そうなんですよ。もう、女の子は口が達者で僕なんかいつもやり込められていますよ」
「そうなんですか」
咲子は微笑ましい親子の様子を思い浮かべる。こんなお父さんがいる娘さんがうらやましい。