叶わぬ恋の叶え方

「私は売れないアイドルだったんです。売れてもいなかったし、本当に若いうちしかできない仕事ですしとっくの昔に辞めましたけど」

咲子は笑みを浮かべながら答える。

いわゆるB級アイドルってやつだ。二流の青年誌のグラビアにしか出たことがないから、自分の存在なんて知っている人なんかいないだろう。咲子のことを知っている高村さんはかなりマニアックなアイドル通に違いない。

「何ていう名前で活動していたんですか」

「柊えれなっていう芸名でした。事務所の社長がつけました。『丹羽咲子』なんて地味な名前じゃアイドルっぽくないですからね」

「そうだったんですか。ここには色々な人が入院しにきますけど、元芸能人の方に会ったのは初めてです」

「いえ、芸能人っていってもそんな大層なもんじゃないんですよ」

咲子は両手を前にかざして振る。
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