叶わぬ恋の叶え方
所在ない気持ちでいると、受付の前に坂井先生が現れた。
数日ぶりに会う先生の姿は、勤務が終わったばかりのせいか目元に疲労をにじませている。それでも彼らしい温かな笑みを浮かべている。
「丹羽さん。こんにちは」
「坂井先生。こんにちは。この度は傘を見つけてくださってどうもありがとうございました」
咲子は軽くお辞儀をする。
「いえいえ。あの傘が丹羽さんのだとわかって良かったです。今日は、お休みなのにわざわざこちらまで出てこられたんですね」
「はい。特に予定もなくて暇でしたから。先生は勤務を終えられたところだったのですね。お仕事お疲れ様でした。先生、あの、これどうぞ」
咲子はトートバッグの中から茶色い紙バッグを出した。そこには彼女が勤務するC社のロゴが印刷されている。
「これは?」
「傘を持って来てくださったお礼です。うちの会社の苺シュークリームです」
「ああ、そんな気を使わなくてもいいのに」
「いえ。お世話になりましたから」
咲子は紙袋を前に突き出す。