叶わぬ恋の叶え方

咲子の窮状を見兼ねた親戚のおじさんが、彼女に就職先を紹介してくれた。おじさんの取引先が今の勤務先である製菓工場で、彼はそこの人事部長とも面識があったから、咲子を契約職員としてねじ込んでもらった。その後、彼女は清水さんのように昇格審査を受けて正社員になった。

咲子自身もコネがあったのはラッキーだった思う。

工場に勤め始めても、周りの同僚は拍子抜けするほど「柊えれな」の存在に気づかなかった。売れないアイドルなんて所詮そんなものかと思った。咲子が働いていたのは食品加工工場だから、華美な化粧は禁止されていた。アイドル時代の濃いメイクをとると、悲しいことに数段美貌のレベルが落ちてしまう。

おまけに、ここ数年で視力が落ちたので眼鏡をかけるようになった。眼鏡に作業着姿の女はほとんどおばさんと言って等しい。

こんな風貌なので、この数年彼氏いない歴を更新している。まして職場では姐御肌で通っているので、同年輩の若い男性職員は恐れをなしているのか近づいてこない。もっともあれは仕事用のキャラクターなのだが。


ある時、そうとばかりは言えない出来事があった。
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