叶わぬ恋の叶え方


 それから数日後、食堂で食事を済ませた咲子が、自販機でお茶を買おうとしていると、また徳森が現れた。

「こんにちは、丹羽さん」

 彼はジャンバーに両手を突っ込み、笑みを浮かべてこちらを見ている。

「あ、徳森さん、こんにちは」

 咲子が彼の姿を確認する。

「徳森さんも食後にお茶ですか」

「ううん。俺は微糖コーヒー。ドライバーには眠気が大敵やから、運転席のドリンクホルダーに入れんねん」

「ああ、コーヒーですか」

「丹羽さんはいつも緑茶?」

「はい。脂っこいランチの口直しには緑茶がいいんです」

「せやなぁ。確かにこここの日替わりは揚げもんばっかやしな」

「ええ」


 咲子がたずねる。

「ドライバーの徳森さんも社食で食べるんですね。ドライバーの人たちって、外回りをしている時にどこかで済ませてくるのかと思っていました」

「ああ、社食な。確かに丹羽さんの言うとおり、俺ら基本、一日中外回りしてんねん。せやけど、たまぁに日中工場に戻れる日もあって、そんな時はここで食べるんや。今日もそう。まあ、大してうまないけど値段は安いなぁ。たまになら社食もええわ」

 徳森はからからと笑う。

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