叶わぬ恋の叶え方
「丹羽さんはいつも社食?」
「社食とお弁当半々です」
「へえ、弁当作らはるんやなぁ」
「毎日作る甲斐性はないですけどね。夕飯の残り物入れるだけの簡単弁当ですよ。この工場は辺鄙な所にあって、周りに食べ物屋さんがないから残念ですよね」
この製菓工場は山のふもとの田畑に囲まれた地帯にある。
「せやなぁ。そう考えたら、俺ら外勤は食べるもんには恵まれてるかもしれへんなぁ。なあ、丹羽さん。うまいパスタ屋があんねんけど。そこ、デザートも充実してるし。君、パスタ好き?」
徳森がきく。
「え? パスタですか? 私パスタ大好きですよ! どこですか、県内ですか? 場所を教えてくださいよ!」
咲子が目を輝かす。実際、パスタが好きでない女子などいないに等しい。
徳森がごく自然に言った。
「郊外の町にその店があんねん。ほな、今度俺が案内するわ。丹羽さんさえ良ければ」
「え?」
咲子の思考が固まる。
それってつまり、そういうこと?
こんな直球を投げられたのはもしかしたら初めてのことなのかもしれない。