叶わぬ恋の叶え方

「男は皆……」と聞いて、坂井医師はどうなんだろうと咲子は思った。どうしたものか、またあの先生のことが脳裏によぎった。

「お昼ご飯を節約してるってことですけど、お弁当はどうですか」

咲子はさりげなく、彼女の存在に探りを入れた。

「丹羽さんみたいに? 俺、朝はそんな余裕はないなー。元カノも俺に弁当作ってくれる子ではなかったし」

咲子の意図を知ってか知らずか、徳森は元彼女のことに触れる。彼女に「元」って付けるからには今の彼はフリーなのだろう。それでも咲子はたずねてみる。

「じゃあ、徳森さんは今はフリーってこと?」

「そらフリーに決まってるやんか。でなきゃ今日、丹羽さんを誘ったりなんかせえへん。どう? 安心した?」

徳森はやっぱり咲子のききたいことがわかっているようだった。彼はこちらを一瞥して微笑む。

「丹羽さんも今はフリーやろ?」

「うん、そうだよ。でなきゃ、ここについてこないわ」

「やろ?」
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