叶わぬ恋の叶え方
「へえ、和歌山なん? 俺、小学校の頃に和歌山に遠足で行ったで! 南紀白浜! メッチャ遠かった!」
「大阪からだと特急で行く所だよね。私も大阪行ったよ。万博記念公園」
思いがけず共通の話題を見つけて、咲子の話し方も砕けてくる。
「万博記念公園! 遠足で行く場所の定番やな! なあ、見たことある? 太陽の塔の裏、どないなってるか?」
「うん、知ってる! 表側と全然違う顔が描いてあるよね」
「表側の表情はメッチャいかってんのに、裏側はおちょぼ口で静かやねん。あれ、メッチャ笑けるわ」
「そうね、あれ笑っちゃうよね」
二人の顔に笑みが浮かぶ。
「丹羽さんは関西人としゃべっても関西弁にならへんな」
徳森が指摘する。
「まあ、こっちが長いからねえ。急には出てこないなぁ」
高校を出てからずっと故郷を離れて暮らしてきたのだ。過去には里帰りをする余裕もなかった時期がある。
でも、不思議と両親と電話で話す時は故郷の言葉が口をつく。
「ねえ、徳森さんはお盆とか正月に帰省する?」
「俺はその時期は休みをとって帰るようにしてるで。地元の友達にも会いたいし」
「大阪はまだ近いって感じがするんだよね。でも私の実家はもっと遠いの。新大阪からさらに電車を乗り継がないと行けないの」
「そやな。単純に東京ー大阪間やったら安い高速バスでも帰れるもんな。俺も、節約時代はよう利用しとったで。夜行バス片道3,500円」