叶わぬ恋の叶え方
「あ、やっぱ女の人は知らんねんな。柊えれなってな、何年か前におったグラビアアイドルやねん」
「あ、そうなんだ」
咲子が思う以上に、柊えれなの知名度は高いのだろうか。
「うん。丹羽さん、眼鏡取ったらあいつに似てると思うねん」
あいつ呼ばわりされた。
「へ、へえ。そんなこと言われたのは初めてだよ。その人ってどんなタレントなの? かわいい?」
徳森がタレントの柊えれなのことをどう思うかききたくて、咲子はさりげなくたずねる。
もしかして彼は、柊えれなのファンだったのかもしれない。なんて思いが、胸の中をちょびっとよぎる。
「ああ、柊えれななぁ。誰も覚えてへんような単なるB級タレントやで。深夜のお笑い番組でいじられ要員やってたオネーチャンやで。そら丹羽さんかて、あんなん知らんはずや。俺かって丹羽さんに似とるから思い出しただけで、あいつのことは忘れとったわ。水着のアイドルなのに貧乳やったし、あんまし可愛ないでぇ」
「あ、そう……」
きかなければ良かったと咲子は思った。
「丹羽さんの方がずっと可愛い」
徳森は笑みを浮かべて言う。
きっと咲子を喜ばせようとして言っているに違いない。
でも、彼女は胸の中で何かがしぼんでいくのを感じた。
「あのさ」
咲子がたずねる。
「もし私がその柊えれなさん本人だったら、どう思う? 徳森さん、ああいうタレントと付き合いたい?」