叶わぬ恋の叶え方
「え? 丹羽さんが柊えれなやったら? そんなこと想像もできひんなぁ。俺、あんな色物と付き合うのは嫌やなぁ。いくらちょっとは可愛い女でもご免や。俺は清楚な女が好きやねん」
徳森は実に正直に答えてくれた。
「そ、そりゃ、普通そうよねえ」
咲子は無理やりにあいづちを打つ。
彼女の目がテーブル上の紙コップに注がれる。
視線がどうしても下に向いてしまう。
「うん? 丹羽さん、どないしたん?」
咲子の表情の変化に気づいて、徳森がたずねる。
「ううん。何でもない。ちょっと疲れたのかも」
咲子は作り笑いを浮かべる。
「大丈夫?」
徳森が優しくたずねる。
「うん。大丈夫。大したことないから」
「なら、ええけど」
「ねえ、もう帰ろうよ。もうこんな時間だよ」
咲子が切り出した。
「あ、ああ。せやな。俺もちょっと疲れたかな」
数回目のデートはお開きになった。
咲子は徳森が「お休み」と言うのにも生返事をした。