叶わぬ恋の叶え方

それから咲子は徳森とは会わなくなった。

彼はハンサムで優しい人だ。

咲子のことを気遣ってくれる。

歳が近いから話だって結構合う。

でも、あの日以来心がノーと言っている。

それは直感的なものにすぎないけど、何かが違うと思った。

柊えれなは咲子自身なのだ。

たとえそれが芸能事務所によって作られた虚像だったとしても、自分自身のことを悪し様に言われるのは悲しかった。

確かにあれはかっこ悪い生き方だったけど、彼女なりに一生懸命通ってきた道だから。


徳森に別れを告げた時、当然のことながら彼は咲子に何故かとたずねてきた。


彼女は別れの明確な理由も言えないまま、相手を焦燥させた。

自分の分身も愛してほしかったなんて言えなかった。

自分の正体も明かしていないのに、本当の自分をわかってくれなんて虫のいい話だ。

徳森にとって咲子の変心はわけのわからないことだったし、彼の落胆する姿に彼女も罪悪感を抱いた。



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