叶わぬ恋の叶え方

 坂井先生は咲子を神社に近いコーヒーショップへ誘った。

 久しぶりの再会でいきなりお茶に誘われた。
 
 咲子はうれしい気持ちの半面、戸惑いも感じる。

コーヒーショップで彼と向かい合わせに座ると、なんだか緊張した。

「お元気そうですね。お仕事は順調ですか」
 
 先生がたずねる。

「はい、お陰様で」
 
 咲子が答える。

 目の前にいる先生はあの時と同じ柔和な笑顔を浮かべているけれど、咲子は訝る。

 彼は一体どういうつもりで元患者を誘ったのだろうか。

いくらやましいことはないとはいえ、既婚者の彼が独身の若い女を伴ってお茶をしているのは、世間的にはよろしくない光景なのではないだろうか。

それについてきてしまった自分も自分だけど。


「先生は仕事、お忙しそうですね」

「そうですね。僕の仕事はいつも目が回るような感じですよ。あっという間に時間が過ぎていく」

 きっとそうなんだろうなと咲子は思う。

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