叶わぬ恋の叶え方

「江波さんはあれから退院していかれたんですよね」

 咲子は病院で同室だった主婦についてたずねる。

「はい。彼女はあなたが退院してからほどなくして、糖尿病の治療を終えられて家に帰られましたよ。今でも定期的にうちの病院へ糖尿の検査に来られます」

「そうでしたか」

 咲子は噂好きな主婦のことを思い出した。

「高村さんはお元気ですか」

 高村さんは発達障害と心臓疾患を抱えている患者で、ありがたいことに彼は柊えれなのファンだった。徳森と違って、彼は柊えれなのことを高く評価してくれていた。
 
「実は高村さんは心臓疾患が重くなったんです。彼はもっと専門的な治療が受けられる循環器センターに移っていかれましたよ」

 先生の表情が曇る。

「そうだったんですか。高村さんはそんなに悪くなってしまわれたんですか」

「はい。うちの病院では対処できないほど病気が進行してしまいました」

「治る見込みはあるんでしょうか?」

「さあ……僕も心臓分野が専門ではないので何とも言えません」

 先生が静かな声で答える。

「……そうですか」
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