叶わぬ恋の叶え方
「先生は奥様のことを好きだったんですよね?」
「はい。そりゃ最初は親友のしたことに対する贖罪の気持ちや、彼に捨てられた彼女に対する同情が付き合うきっかけでしたけど、だんだん愛着の情が湧いてきました。こういう関係もありなのかもしれないと思うようになりました。だから、彼女の突然の変心に戸惑ったんです」
この元夫婦の関係はちょっと話を聞くだけではよくわからない。結局、二人に恋愛感情はなかったということなのだろうか。
「でも、先生は奥様の願いを聞き入れたんですね」
「はい。彼女は言い出したら聞かない人ですから」
「どうして私にこういう話をされるのですか」
咲子がたずねる。
すると先生は答えた。
「それはですね……誰かに自分の話を聞いてもらいたかったんです。あなただったら僕の話を聞いてくれるんじゃないかと思いました。あなたはその、優しい人だから」
優しい人だってまた言われた。
自分ではそんなつもりないんだけど。
先生はいつも、四方山話から深刻な病状まで患者の話を聞く側だけど、自分の悩みを相談する人はいないのだろうか。
「それで、先生は今後どうされたいんですか。復縁はお考えじゃないんですか」
咲子がたずねる。