叶わぬ恋の叶え方

その数瞬、咲子の頭の中で色々な思いが飛び交った。

目の前にいる人は、今確かに「また会ってくれないか」と言っている。

素直に喜ぶにはまだ早い気がして、彼女は言葉の真意を探ろうとした。

もしかしたら彼は相談相手が欲しいのかもしれないし。

「先生。あの、それってどういう意味ですか。……つまり私と交際がしたいっていうことなんでしょうか」

咲子の問いかけに、先生はいつになく落ち着かない表情で答える。

「はい」

坂井先生が答える。

「女の人を誘うということはつまりはそういうことです」

「そうですか」

咲子は表情を変えず、それ以上言葉を継がない。

それを見た先生が言葉を続ける。

「あの、僕も妻と別れて4ヶ月だし、そろそろ新しい出会いがあってもいいかなって思ったんです。まあ、僕はその、あなたよりも多少年かさですけど……もしあなたさえ良かったら……」

大人の8歳の年の差は多いのだろうか、それとも少ないのだろうか。

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