叶わぬ恋の叶え方
「何で私なんですか」
咲子がたずねる。
「病院でお会いした時に素敵な人だと思いました。タレントをやっていたというのもよくわかる話です。高村さんがあなたの話を盛んにするものだから、余計 に意識をしてしまいましたよ。最もあの時は既婚者でしたから、それ以上どうこうという気持ちはなかったですけど」
彼は右手で頭を掻いている。おそらくこれが緊張している時の彼の癖なのだろう。
「素敵な人」だなんてアイドル時代も言われたことなんかない。皆、柊えれなのことはただのB級アイドルだと思っていた。
ネットの掲示板で「アイドルの割に可愛くない」などと書き込まれ、がく然としたこともある
坂井先生が咲子のことを好意的に評価してくれていたとは知らなかった。
思いがけないうれしい言葉に咲子の心がほっこりする。
ずっとずっと頭の片隅で忘れられずにいた人に誘われている。
これってまさに奇跡だ!
けれど咲子の口から飛び出したのは次のような言葉だった。