叶わぬ恋の叶え方
「申し訳ありませんけど、先生のお誘いは受けられません」
「え!?」
「あなたはまだ別れた奥様に未練を持っていらっしゃって、心の奥底で復縁の可能性も探っておられます。そういう人と付き合うのはちょっと……嫌です。もし奥様のことを忘れたいがために他の女と付き合いたいのなら、尚更あなたとはお付き合いできません」
咲子は目を伏せている。
「そうですか」
先生は咲子の言うことを否定もせず、そう一言言った。
では、咲子の言ったことは図星ってことなのだろうか。否定して欲しかった。
「すみません」
「いえ、僕の方こそ 無理を言ってすみませんでした」
先生はうなだれている。
彼は元患者にふられてショックを受けているのだろうか。
いや、多分そうじゃないと咲子は思った。彼の心に残るものを、彼女が思い知らせてしまったのだろう。
先生は自分が誘ったのだからと、お勘定を払ってくれた。
帰り道は別々だった。