叶わぬ恋の叶え方
もう外は日が暮れてかけていた。
空を見上げて、「夕焼けが目に染みる」なんてドラマのセリフみたいなことを咲子は思った。
先刻を振り返って、あれはちょっともったいなかったかなとも思った。
動機は何であれ、先生に誘われたのなら付き合ってみても良かったのではないだろうか。憧れの人と付き合う絶好のチャンスだったのではないだろうか。
咲子は苦笑した。
この前はこの前で職場で人気のイケメンのこともふってしまうし、自分はどうしてこう柔軟性がないんだろう。
こんなにNGばっかり出してたら、その内誰も寄りつかなくなってしまうだろう。自分だってそんなもったいつけるような女でもないくせに。
ただの平凡な女だ。
つまらないプライドは捨てるべきなのか、それとも何にせよ、自分を安売りすべきではないのか。
それって結構難しい問題だ。でも、こういうことに正解ってないのかもしれない。
「武士は食わねど高楊枝」という言葉が思い浮かんだ。これって男だけでなく女にも当てはまるのだろうか。
今日は最寄り駅からアパートまでの上り坂がやけにキツく感じられる。ちょっと疲れたのかもしれない。