叶わぬ恋の叶え方
お昼時。工場の食堂に行ったら、清水さんが合い席になった。同じラインで咲子の右腕として働いてくれている、頼もしいアラサー女子だ。脱OLをした後咲子たちの工場に契約社員として入社してきて、昨今晴れて正社員に昇格した。
清水さんは日替わり定食を注文していた。体を使う仕事なので、がっつり食べないと夕方まで体力がもたない。咲子もいつもはカロリーなんか気にせずに揚げ物の入ったセットを注文するけど、今日はなんだか食欲がなくてきつねうどんを食べている。
「姐さん。なんか最近、浮かない顔してるよね」
清水さんが咲子に話しかけてくる。職場では年下の咲子の方が先輩なので、彼女は咲子を「姐さん」と呼んでくる。タメ口だけど。
「そう? やっぱわかる?」
「うん。いつもより覇気がない。また体調が悪くなったってわけじゃないよね」
「ううん。体は大丈夫だよ」
「うどんだけじゃお腹減るよー」
「うん、わかってる。でも今日はこれでいいの」
「女子が食欲なくすってさ、それって恋わずらい?」
清水さんがど真ん中を突いてくるから、咲子は苦笑した。
「清水さんはそういうのないの?」
「えー、私ぃ? うーん、恋に悩んだ季節なんて昔のこと、ちょっと思い出せないなぁ」
てっきりはぐらかされるかと思っていたら、清水さんはその思い出話をしてくれた。