叶わぬ恋の叶え方

「恋はつらいよねぇ。楽しいけどつらい。あの表裏一体さって何なんだろうね」

 清水さんは箸を止めて遠くを見ている。

「うん」

「実を言うと私はさ、前の会社辞めたのは取引先の社員と不倫してたからなんだよね。女房持ちの年上男と付き合ってて、それが奥さんにばれて、それを奥さんに会社にチクられてってやつ。ありがちな話よ」

「そうだったんだ」

「うん。リストラされたっていうのは嘘なんだ」

「そう。清水さん、その人のこと好きだったんだ?」

「うん。あの時はね、酔ってたよ。でも今は後悔してる。あんな男と付き合ったのは人生の汚点だったと思ってるよ。あの時の私はうぶな女の子ちゃんでね、女たらしな奴にかんたんにだまされてたんだよ。向こうから来たのがきっかけなんだけどね」

「向こうから?」

「うん。そもそも浮気する男なんて手が早いじゃない? 向こうが私に言い寄ってきたわけ」

「そう」

「そりゃ、熱烈にアプローチされたらこっちだって根負けしちゃうよ。倫理観なんかふっ飛んじゃった」

「でも今はそれを後悔してると」

「うん。酔ってるときはさ、『こんな関係でも自分たちは真剣なんだ。世間がどう思うと構わない』なんて、お花畑思考を展開していたわけよ。でもさ、酔いが醒めた時の揺り戻しといったらなかったよ」

「そういう関係とはいっても、彼にちょっとも愛はなかったの?」
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