叶わぬ恋の叶え方
毎日はバラ色
隣にはチェックのケーブルニットとジーンズを着た長身の男の人がいる。

普段着姿の坂井恭介である。病院での白衣姿とは違って、新鮮な印象を受ける。

彼に告白をされた日から、咲子は彼とちょくちょく会うようになった。

彼は既婚の医者で、病院を出たらもう二度と接点のないはずの人だった。好きになっておも完全な片思いで終わるはずだったのに、こんな関係になるなんて、世の中一体何が起こるかわからない。

こうやってそばにいるとうれしい気持ちになる。

病院にいた頃は彼の顔や姿を見つめることだってはばかられたけど、今は思い存分彼の理知的な横顔を眺められる。

二人は互いの休みを合わせ、馴染みの一の宮に参拝した。ここは二人が再会した思い出の場所だ。

参道には黄金色に付いた銀杏並木が広がっている。

「うわー! きれい!」

咲子は思わず声を上げる。

その傍らで坂井先生が微笑んでいる。

「銀杏があんなに落ちてる!」

「炒ったら美味そうだね」

「先生は銀杏が好きなんですか」

咲子がたずねる。

「子供の頃よく拾ったよ。親父の晩酌に出されてたのをつまみ食いしてた」

「へえ」

「君は?」

「私はたまにしか食べなかったなぁ。この季節しか採れないし」

「そうだね。君、料理はするの?」

「基本、休日は自炊ですよ。平日は半分くらいお弁当を作っていきます。買ってきた物だとどうしても野菜不足になるでしょ」

「へえ、それはちゃんとしてるね。料理は得意?」

「そんなに得意でもないけど、やっぱり手作りのご飯は元気の出方が違うでしょ。味はともかく栄養があるでしょ」

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