林檎が月をかじった夜に
空を行く夢
あたり一面、雲ばかりです。
雲は星明かりを受けて、夜の世界を優しく照らしています。遠く静かなところから見る、都会の空のようです。
雲の表情はとても豊かで、見ていて飽きません。
あちらに山ができたと思ったら、こちらにはお城ができました。かと思うと、あちらの山は風車に変わっているのです。
小船は、波間をぬうように雲の海を進みます。
「見て。雲の中で、砂粒みたいなものがキラキラ光っているわ」
身を乗り出して言ったエンに、モヘが答えます。
「夜の雲は子供の夢でできているのさ。だから、ぜんぶキラキラしているよ。
でも、ときどき怖い夢があって、雨を降らせる雲になるんだ」
さいわい、今日は、雨を降らせそうな雲は見当たりませんでした。