林檎が月をかじった夜に




 「僕は、お月さまになりたかったんだ。お月さまみたいに、きれいになりたかったんだ。みんなに見てもらえる、お月さまになりたかったんだ」



エンは、リンゴに欲張りと言ったことを後悔しました。

リンゴにも悩みがあったのです。


「ごめんなさいね、リンゴさん。でも、やっぱりあなたはリンゴさんだと思うの」



モヘが優しく言い添えます。



「そうだよ、君はリンゴさ。最高のリンゴさ。

だからリンゴのままで、僕に力をかしてくれないかい?

君がいないと、最高の赤色絵の具はできないんだ」




リンゴはとても迷ったようです。
船の上で、コロコロと転がりながら考えます。

ついには、決心してうなずきました。



「そうか、僕は、僕なんだね。僕は、僕で良いんだね。
一緒に行くよ、優しい猫さん。
その前に、お月さまを返すよ、優しいお姉ちゃん」









 さあ、めでたしめでたしまで、もう少しです。
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