林檎が月をかじった夜に
きぼうの影
夜空には月が浮かんでいます。
ほっそりとした三日月です。
けれど、泣いてはいません。
雲を銀色に照らしながら、誇らしそうに輝いています。
パパもママも、きれいな三日月に気がついたようです。
「まあ、りっぱな三日月」
ママはうっとりため息をつきました。パパは首をかしげます。
「うん、本当にりっぱだね。でも今日は、たしか満月じゃなかったかな」
エンは、みるみる笑顔になりました。冒険は夢ではなかったのです。
だって、パパの言うとおり、今日は満月だったのですから。
「三日月でも、満月でも、お月さまは幸せそうだわ」
エンはそう言うと、クスクスと笑って、ほおづえをつきました。