林檎が月をかじった夜に
雲への南風
そこへあたたかい風が吹いてきて、エンの鼻をくすぐります。
するとどうでしょう、小船がフワリと浮き上がり、海からはなれていきます。
「よし、南風に乗ったぞ」
モヘが大きな声で言いました。
小船は風船のようにのぼっていきます。
とうとう、水平線の向こうまで見渡せるようになりました。
「怖いわ。風がやんで、落ちたりしないのかしら」
エンは不安です。こんな高いところから落ちてしまえば、無事ではいられません。
家に残してきたパパとママを思い出すと、いっそう不安はふくらむのでした。
でも、そんなエンを、モヘが勇気づけます。
「大丈夫さ。ほら、雲が出てきたぞ。雲の上に出てしまえば、風の心配はいらなくなるんだ」
はたして、その通りでした。
雲の上に出ると、小船は海を行くように進みはじめたのです。