島渡り
―神様は、象徴なんだ。

人間は、一つの象徴を見つめることで結束する。つまりは、「idol」ということだ。
 
僕は生きていくうえでたくさんのことに悩まされて、真剣に悩んできた。それなのに、神様にまったく頼らなかったのには、わけがある。
 
その話をした三年後。従兄弟は病魔に蝕まれてこの世を去った。

従兄弟は病床でも、ずっと、僕に神様の話をしてくれた。
全ては神様が決めることで、神様が一番よいことをしてくださる。

従兄弟はずっと神様を信じ、未来に希望をかけ、そして安らかに死んでいった。

従兄弟の遺体が埋まっている土の上には、まるで従兄弟を押しつぶすかのような、大きな白い十字架が建てられた。

それは、己の存在を誇示するがごとく、堂々と立っていた。
周りの墓石が、みすぼらしいものに思えた。

僕は一度もその十字架に手を合わせることも、祈ることもなかった。
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