島渡り
その島へ行くのには大変な苦労があった。

まず、島への交通手段がなかった。船は何故か一昨年で運航を打ち切られていた。

やっとたどり着いた島へと続く橋も、島の方が拒むように、厳重にロープが張られていた。

観光案内所では、「止めた方がいい」と言われ、橋を渡るときには、何度もお爺さんから、止めるように説得された。

それでも、行くと僕が言うと、彼は僕に向かって手を合わせた。

「神様、この若者の命が助かるよう、お守りを。何も罪を犯していない彼が、あの島でも祝福されることを。」

心の中では、下らない、と笑いながら、僕はお爺さんに適当な挨拶をして、ロープをくぐった。

島に入ると、寂れた小さな港の風景がまず眼に入った。そこに停泊している何艘かの舟は全て木製で、しっかりと縄で繋がれていた。

その島は、時代に置いていかれた場所だった。

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