チェンジ type R
第十章
 叱責は思ったよりも少なく……というか、被害は免れることができた。
 助かったというか、運が良かったというか。

(――アホかっ! 大体、お前はなあっ……!)

 隼人くんがそう言って怒ろうとした瞬間に……まるで計ったようなタイミングでバスが出発したのだ。
 ナイス!ナイスだよ!運転手さん!
 虚を突かれ、怒るタイミングをずらされてしまったようで、隼人くんはバツの悪そうな顔になっている。
 あるよねー、怒るのが正当なはずなのにタイミングはずれて怒りにくくなること。

 出発時の揺れが収まったときには、すでに怒るタイミングは去ってしまっていたようで。
 これは私にとっては本当にラッキーだったと呼べるだろう。
 完全に怒鳴られて、説教を喰らうこと間違いなしと思っていたのだから。

 しかも、完璧に私の勘違いだったし、言い訳のしようもない状況だったわけで。
 運が悪ければバスが目的地に到着するまでひたすら怒られていた可能性もあったわけで。
 助かった……。

(そんで……どうすんだよ?)

 場都の悪さを誤魔化すように、コホンと小さく咳払いをしてみせてから、隼人くんが私に向かって聞いてきた。
 どうすんだよ、とは……やはりメールのことだろう。
 私の勘違いさえなければ、すぐにこのメールの対策を考えるべき状況だったわけだし。
 『隼人』の名前で送られてきた謎のメール。さて、どうやって応対するべきか……。
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