チェンジ type R
 いかに『隼人』という知っている名前を出しているとはいえ。
 得体の知れない相手であることには間違いない。
 正体がハッキリするまではこちらの情報も安易に与えるべきではないだろう。

 それに、いかに怪しくはない第三者が正体だったとしても、この『入れ替わり』という奇妙な現象において、自分の状況すら把握していない人間かもしれない。
 メールの文面を鑑みるに、その可能性も多分にある。
 だとしたら、正体を探ってみて、怪しくないことを確認した上でコチラが持っている情報を提供してあげるという形にした方がコトを優位に進められるかもしれない。

 しかし、隼人くんはこの人物を探ることに乗り気ではない様子。
 理由は見当が付かないが、とにかく相手のことを知るのはどう考えても優先すべき事項であることは間違いないはずだ。
 隼人くんが理由を言わない以上、自らの意思をもって行動すべきだと思う。

 結局、何も続きを話そうとしない隼人くんを尻目に携帯を開く。
 出来れば文面を相談したいと思ったが……乗り気でないならばそれも望めない。
 メールを開き、『返信』のボタンを押し、メールの作成画面を表示させる。

(ちょ、ちょっと待ってくれ!)

 と、慌てて隼人くんが制止をかけてくる。
 うーん、やっぱりノリ気ではないのか。
 どうして、このメール相手の正体を探ることを止めようとするのか?
 やっぱり、止めようとするからには何かの理由があるはず。
 何か思い当たるフシはあるけど、何かを隠してるとか?

 少しでも早く次の行動に移りたいところだし……時間はかけていられないけど、聞いてみる価値はあるかな?
 というか、どんな些細なことが元に戻る方法へのヒントになるか分からない。
 ここは意地でも聞かせて貰わないと!
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